街を歩く、丸く歩く
GPSアートとサークルウォーク
地理学の人と旅行したとき、職業病的なことってあるのと聞いたら、
「多くの人もそうかもしれないけど、行きと帰りで別の道を通りたくなる」
なんて言っていた。地理学と関係あるのかは分からない。
そういえば別の地理学徒と話したときは、
「交通機関に詳しい人が多い。授業中、先生に隠れて時刻表読んでるヤツとかいた」
と言っていて、微笑ましかった。
もはや人が道に迷うことは無くなった。Google Maps の誕生を描いた書籍の『NEVER LOST AGAIN』というタイトルが示すように。
そんな現代において「GPS」という言葉は、多くの人に馴染み深いものだろう。アメリカが運用する、人工衛星を用いて地球上の位置を特定するシステムのことを指す。
この仕組み自体を正確には「GNSS(Global Navigation Satellite System, 全地球衛星測位システム)」と呼ぶ。だが一般にはGPSという言葉が使われるだろう。ホッチキス、ゼロックス、テトラポッドみたいな感じ(商標の普通名称化 - GPSは商標ではないが)。
GPSの他にも「みちびき」(日本)、「GLONASS」(ロシア)、「Galileo」(EU)といったシステムが世界には存在する。
そう遠くない昔は、位置情報を得るのには大変な手間がかかった。生態学の研究をしていた方に聞くと、それはそれは大掛かりな機材をかついでフィールドへ赴いていたそうだ。写真を見せてもらったら、大昔のテレビみたいなアンテナが写っていた。いや、それさえも過去の人から見たら魔法のようなことだろう。もっと前には、夜空の星を当てにしたりといった世界だったわけだ。
それが今や、皆のポケットに収まっている小さなデバイスで、それができる。
GPSを使って記録した軌跡で色々なものを描く「GPSアート」という世界がある。現代におけるナスカの地上絵みたいな取り組みだ。
GPSアート.info というウェブサイトでは、様々な作品を見ることができる。
アートというほどではないが、去年まで田んぼの真ん中に住んでいた私も、そこをジグザク走って遊んでいた。定規で引いたようにクッキリする。


部屋でパソコンをカタカタするのではなくて、家を出て身体を使ってデジタルをやる感じが面白い。
オススメしたいのは「サークルウォーク」だ。
その名の通り、街(に限らず地球上のどこか)を、ぐるりと丸く歩く。
先述のウェブサイトでもまとめられている。国内外の都市から鳥取砂丘まで、半径3.14kmの正円を描く。
私は二度、これをやったことがある。
一度目は、東京で。日本橋(日本国道路元標)を中心にしたコースが公開されており、それをもとにした(東京サークルウォーク 32km | GPSアート.info)。
友人と二人、30kmほど、7時間くらい延々と、いろんな話をしながら歩いた。
丸く歩くので、街や交通網の形を全く無視することになる。それが面白い。
A地点とB地点、どちらも行ったことがあっても、それをこのようなルートで移動したことはない。それが不思議な感覚を生む。いつもの道を、風景を、違った視点で見る。地図を眺めるのともまた違う。
また、何時間も歩いて歩いて歩いて、往復しているわけでもないのに、最後に辿り着くのがスタート地点、というのも初めて味わう体験で面白かった。
二度目は、札幌で。これは一人で歩いた。
元にしたルートは、さっぽろテレビ塔が原点(札幌サークルウォーク(札幌市)34km | GPSアート.info)。そもそもこの街は、碁盤の目のように、タテヨコ整然と道が並んでいる。そしてその原点がテレビ塔だ。
南北を流れる創成川を境に、東側を「東〇丁目」、西側を「西〇丁目」となっている。
東西を走る大通を境に、北側を「北〇条」、南側を「南〇条」となっている。
札幌駅は北6西4、すすきの交差点は南4西4、といった具合だ。そのためこの街では、住所を見れば位置を想像できる。
サークルウォークでは原点からの距離が常に一定なので、歩きながら各地点での座標(住所)が1マスづつ変わっていって面白かった。
ちょうど引っ越したばかりの頃だったので、この新しい街を、その空気を肌で感じ取るよい機会だった。
GPSは持たなくてもいいけれど、街をそぞろ歩き、いつも通らない道を選んでみる。すると何か発見があるかもしれない。人生という道に迷ったときこそ、そういう道草が、回り道が大切なのではないか… とか言ってなんか丸く収めようと思ったが、上手くいかなかった。おしまいです。




大団円でめでたし◯